ベトナムの働く母親たちから学ぶ、仕事と子育ての両立

ベトナム滞在中、働く母親たちの姿に日本とは違う刺激を受けました。彼女たちの活躍ぶりと、それを支える社会システムについて、日本との比較を交えながらお伝えしたいと思います。

ベトナムの女性の労働力参加率

まず驚いたのは、ベトナムの女性の労働力参加率の高さです。世界銀行のデータによると、ベトナムの女性の労働力参加率は約70%で、日本の約53%を大きく上回っています。街を歩けば、至るところで働く女性の姿が見られ、その多くが子育て中の母親たちでした。

ある日、地元の市場で出会った野菜売りの女性は、赤ちゃんを背中におぶいながら元気に商売をしていました。「子どもは家族みんなで育てるものよ」と彼女は笑顔で語ってくれました。

家族のサポート体制

ベトナムでは、祖父母や親戚が子育てを手伝うのが一般的です。この強い家族のサポート体制が、女性の社会進出を後押ししているのだと感じました。

拡大家族の役割

ベトナムでは、核家族化が進んでいる日本とは異なり、拡大家族で暮らすことが多いです。祖父母が同居し、孫の面倒を見るのは当たり前の光景です。これにより、母親は安心して仕事に専念できる環境が整っています。

地域コミュニティの支援

家族だけでなく、近所の人々も子育てに協力的です。「村全体で子どもを育てる」という考え方が根付いており、子どもの面倒を見合うことが自然に行われています。この地域の絆が、働く母親たちの大きな支えとなっています。

企業の取り組み

先進的な企業では、育児休業後の復帰支援プログラムを導入しています。段階的に勤務時間を増やしていく制度や、スキルアップのための研修など、母親が円滑に職場復帰できるような取り組みが行われています。

男性の育児参加

最近では、男性の育児参加を促進する動きも見られます。一部の企業では、父親向けの育児休暇制度を設けており、徐々にではありますが、男性も積極的に子育てに関わるようになってきています。

充実した育児休業制度

また、ベトナムの企業では、育児休業制度が充実しています。出産後6ヶ月間の有給育児休暇が法律で定められており、多くの企業がこれを遵守しています。さらに、職場に託児所を設ける企業も増えているそうです。

ホーチミン市のIT企業で働くCさんは、「会社の託児所に子どもを預けられるので、安心して仕事に集中できます」と話してくれました。彼女の職場では、授乳室も完備されているそうです。

 

課題と改善の取り組み

一方で、課題もあります。長時間労働や低賃金の問題は依然として存在し、特に地方では男女間の賃金格差も見られます。しかし、政府や企業が積極的に女性の活躍推進に取り組んでおり、徐々に改善されつつあるそうです。

政府の施策

ベトナム政府は、女性の社会進出を後押しするさまざまな施策を打ち出しています。例えば、女性起業家向けの低金利融資制度や、女性リーダー育成プログラムなどが実施されています。これらの取り組みにより、女性の経済的自立と社会的地位の向上が図られています。

企業の意識改革

多くの企業が、ダイバーシティ経営の重要性を認識し始めています。女性管理職の登用を積極的に行う企業や、ワークライフバランスを重視した働き方改革を進める企業が増えてきています。これにより、女性が長期的にキャリアを築きやすい環境が整いつつあります。

経済成長と女性起業家の活躍

ベトナムの経済成長も目覚ましいものがありました。街には新しいビルが次々と建ち、若い世代を中心に起業熱が高まっています。そんな中、女性起業家の活躍も目立ちます。

起業支援の充実

政府や民間団体による女性起業家向けの支援も充実しています。メンタリングプログラムやネットワーキングイベントなど、女性起業家が経験やノウハウを共有できる機会が多く設けられています。これにより、新たな女性起業家が次々と生まれる好循環が生まれています。

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子育てと仕事の両立へのヒント

これらの経験を通じて、日本での子育てと仕事の両立について改めて考えさせられました。

  1. 家族や周囲のサポートを積極的に求める。一人で抱え込まず、助けを借りることで、より充実した仕事と子育ての両立が可能になります。
  2. 柔軟な働き方を模索すること。在宅勤務やフレックスタイム制など、自分に合った働き方を見つけることが大切。
  3. 自己実現の機会を諦めない。子育て中でも、学びや起業など、新しいチャレンジができる可能性を見つけること。
  4. 社会の変革を求める声を上げる。職場の環境改善や制度の充実は、私たち一人一人の声から始まる。

日本社会への適用

ベトナムの事例をそのまま日本に適用することは難しいかもしれません。しかし、家族や地域のサポートを活用する考え方や、柔軟な働き方を積極的に取り入れる姿勢は、日本社会でも十分に取り入れられるでしょう。

企業文化の変革

日本企業においても、女性の活躍を推進する動きが広がっています。育児と仕事の両立支援制度を充実させたり、女性管理職の登用を積極的に行ったりする企業が増えています。こうした取り組みをさらに加速させることで、より多くの女性が自分らしいキャリアを築けるようになると感じます。

教育の重要性

ベトナムでは、子どもの教育に対する熱意も非常に高いことが印象的でした。多くの働く母親たちが、自身のキャリアを追求しながらも、子どもの教育に力を入れています。この背景には、教育が社会的成功の鍵であるという強い信念があります。そのため、共働き家庭でも、子どもの学習時間を確保したり、課外活動に参加させたりすることが一般的です。日本でも、仕事と子育ての両立を図りながら、子どもの教育にも十分な注意を払うことの重要性を再認識させられました。

最後に

ベトナムの女性たちの活躍を目の当たりにし、日本社会にもまだまだ改善の余地があると感じました。しかし同時に、日本にも素晴らしい点がたくさんあることも再認識しました。

私たちに必要なのは、他国の良い点を学びつつ、日本の文化や価値観に合った形で、より働きやすい社会を作っていくことではないでしょうか。

皆さん一人一人が、自分らしい働き方と子育てのバランスを見つけていくことが、社会全体を変える力になると信じています。

そしてこの経験を通じて、仕事と子育ての両立には正解がないことを学びました。それぞれの家庭や個人の状況に応じて、最適な方法を見つけていくことが大切です。そして、社会全体で多様な働き方や生き方を認め合い、支え合う環境を作っていくことが、真の意味での「仕事と子育ての両立」につながるのだと確信しています。